クリスタルガラスには鉛を入れることで美しい透明なガラスを作り上げており、現代でも多く使用されています。
ところが鉛は有毒物質です。日本でネットで調べると一般的にさほど鉛は溶け出さないといわれることが多いようですね。
でも海外の論文等で調べるとちょっと恐ろしい事実も…。
ただ私は科学的な専門家では一切ないので、あくまでもそのような情報がある程度で考えてください。
1991年、ドイツで発表された論文「Lead exposure from lead crystal」(J H Graziano , C Blum)によると、数分で少量の鉛が溶け出すことがわかっており、クリスタルのデキャンタに4か月入れたワインが3518μg/lのPb(鉛)が検出されているとあります。日本では、飲料の鉛の基準値は0.1mg/l(100μg/l)のようですので、それを大きく上回ることになります。ついでに海外での基準値はフランスで10μg/l、アメリカで15μg/lとのことですので日本より厳しい基準です。ついでに上記の論文では長期間保存で最大21530μg/lが検出されたとあります。
参考までにヒトの一般的な1日の鉛摂取量は15~25μg程度のようです。
ついでに、フランスのwikipediaでカラフェやクリスタルガラスについて調べると、キチンとその危険性について説明がされていますので、フランスではそれなりに広くその危険性が認知されているのではないかと思います。
1992年の論文でもデキャンタに保存されたアルコール飲料には危険性があることが指摘されています。
90年代にクリスタルガラスの危険性について明らかになり、ヨーロッパでは規制が進み、各ブランドも認識をしているようです。日本ではほとんどその話は聞かないですが。逆に日本のウィキペディアなどでは出典なしにも拘わらず「食器用の鉛クリスタルガラスを通常の使用条件で利用している限り、問題になる程の鉛成分溶出はないとされ、輸入時の検査基準をはじめ管理も行われている」と記載されてしまっていますね。何を信じるかは各々が決めることですが、少なくとも欧米とは認識に差があります。
現在、バカラでは酸化鉛(PdO)の代用としてZnO(酸化亜鉛)、SrO(酸化ストロンチウム)、CaO(酸化カルシウム)といった酸化物をもとにした特許を取得しています(実際に使用してるかは不明)し、鉛を使用してもその表面にコーティングを施す技術もあります。。今日ではこのようにより安全性の高いガラスへ向かっているのが欧米の標準的な傾向です。バカラの海外ホームページを見ても鉛ガラスを売り文句にはしていません。鉛ガラスを売り文句にしているのは日本だけじゃないかと思います。
何度も言いますが、私は科学的な専門家でも医学者でもないので、それが正しいとは言い切れませんが、少なくとも上記のような内容を知った以上、一般使用で問題ないとしても、アンティークでもクリスタルガラスのカラフェやデキャンタなどに長期間ワインなどを保存することは避けるべきだということを周知させる必要性があるのかなと思います。
アンティークにおいてテレビなどでも何の注釈もなしにアンティークを食器として使うことを推奨したりしていますが、きちんと危険性も認識をすることが大切です。
もしこの件で専門的な研究を行っている方がいれば、是非ご意見をください。
【参考】
・ますます注目される食品中の鉛に関する規制 http://www.mac.or.jp/mail/101101/01.shtml
・Lead exposure from lead crystal Lead exposure from lead crystal – PubMed (nih.gov)
・Potential lead exposures from lead crystal decanters Potential lead exposures from lead crystal decanters – PubMed (nih.gov)
・鉛に関する基礎的知識 ー食品中の鉛について考えるー(堀口俊一)