現在のダイヤモンドはほとんどがブリリアントカットと呼ばれるカットですが、アンティークの場合、まだブリリアントカットが生まれる前のものも多く、多様なカットが使用されています。
参考文献 :『DIAMONDS AND PRECIOUS STONES : their history, value, and distinguishing characteristics』(Harry Emaniuel, F.R.G.S.、1867年,2版、 John Camden Hotten, London) …以下(A)
『ENGINEERING』(W.H.Maw and J. Dredge、VOL.XLVII. –FROM JANUARY TO JUNE,1889、1889、ADVERTISEMENS AND PUBLICATION 、LONDON)…以下(B)
『DIAMOND AND PRECIOUS STONES, A POPULAR ACCOUNT OF GEMS』(Louis Dieulafait,1876、Scribner,Armstrong & Co.、NEW YORK) …以下(C)
『Days with Industrials: Adventures and Experiences Among Curious Industries』(Alexander Hay Japp,1889)…以下(D)
『The Art of the Goldsmith and Jeweller』(Thomas B. Wigley, 1911)…以下(E)
※呼称につきましては現在の通称よりも、ここでは一次資料における呼称を優先して掲載しております。
マザラン・カット
(A)の当時の資料でシングル・カット、現在ではマザラン・カットと呼ばれるカット。同資料においては「古いカット」と呼ばれている。
※現代ではこれはダブルカットとするなど諸説あるものと考えられるが、ここでは当時の資料を優先。
ダブルカット・ブリリアント(ペルッチカット、オールドマインカット)
この(A)の資料ではダブル・カット・ブリリアントと呼ばれているカット。また、その説明書きによると当時もっとも「現在普及していたカット」との記述がみられることからヴィクトリアン半ばの定番のカットだったことが窺える。ヴィンセント・ペルッチが開発し、ここから現代でいうオールドマインカットへと発展したと考えられる。図ではペルッツィカットに近いが、オールドマインカットも含め同じように呼ばれていた可能性もある。
※一説ではトリプルカットと呼ばれていたという説もある(特に現代の資料)。また(D)の資料ではThreefold-cut(スリーフォールド・カット)と呼ばれているのも注目である。
(B)(E)の資料でもダブルカット・ブリリアントと呼ばれている。
★もっと古い資料の1751年『A Treatise on Diamonds and Pearls』では単純に「Brilliant」(ブリリアント)と紹介されている。
★現代ではダブルカット・ブリリアントはマザランカット(上述シングル・カット)を指していることが多い。
古い資料による名称 | 現代の資料による名称 |
ラフ | ポイントカット |
テーブルカット | テーブルカット |
オールドシングルカット | |
シングルカット | マザランカット(ダブルカット) |
ダブルカットブリリアント | オールドマインカット、ペルッツィカット、トリプルカット ※現代ではオールドマインとペルッツィは別のカットです |
ダブルカットブリリアント(ラウンド) | オールドヨーロピアンカット |
ローズカット
アンティークのダイヤモンドといえば真っ先に浮かぶのがローズカット。
トップをフラットにせずポイントをつけ、薔薇のつぼみのような形状になる。
ローズカットはもっとカットを減らしているものも頻繁にあり、それらは(A)によればアントワープ・ローズと呼ばれ、平民向けであるとしている。
(B)によると24カットはオランダ・ローズと呼ばれ、18~20カットのものはセミ・ローズカット、6、8,12カットのものはアントワープ・ローズと呼ばれるとある。このことは国も時代も異なる(C)の書籍にも同じように記載されていることからこれは共通認識であったのだとわかる。そしてこのことからもローズカットといえど、そのカット数にはばらつきがあったことは確かである。
(A)によれば長い間時代遅れとされていたが、最近(1867年頃)多くの人が身に着けるようになったと記載されている。
オールド・イングリッシュ・シングルカット
スター・シングルカットとも呼ばれる。
テーブル・カット
シンプルなカットで、インドからの古いジュエリーなどから来ていることが多い。
(c)11th Avenue